間違いなく平癒祈祷は行われたし、あの場にいた全員がそれを見届けていた。
なんなら、治病祈祷祝詞の効果もちゃんと出ている。
あの祈祷のおかげで、私は足の裏の傷が治ったんだ。
「何でだよっ!」
突然声を荒らげ慶賀くんに驚いて肩を震わせた。
「おい慶賀! 巫寿に謝れ」
「でも、でも! お前は嘉正が心配じゃねぇのかよ!」
「でももクソもねぇ。それとこれとは別だろうが。巫寿にあたるのは筋違いだ。謝れ」
強い口調でそう言った泰紀くん。
慶賀くんは視線をさまよわせた後「ごめん」と頭を下げた。
「悪ぃな巫寿。こいつ心配で気が立ってたんだよ」
「ぜ、全然大丈夫……! 驚いただけだし、悪気がないのはよく分かってるよ」
ぶんぶんと両手を顔の前で振って、気にしていないことをアピールする。
「……何があったの? どうしてみんな部屋から抜けだしてるの?」
私がそう尋ねた瞬間、皆は途端に目を伏せた。
その表情に何だか胸騒ぎがしてぎゅっと拳を握る。
「医務室に、入院してる学生の誰かが────心肺停止になったって」
は、と自分が息を飲んだ音が耳の真横で聞こえたように思えるくらい、はっきりと聞こえた。
ばくん、ばくん、と鼓動が波打つ事に大きくなっていく。