自分の手にはドロドロに溶けたアイスキャンディーが握られていた。

そういえば、アイスを食べれる場所を探していたんだった。


「大……丈夫。もう一回冷やせば、なんとか……」

「ならないだろ。それ」

「だよね……」


せっかく貰ったのものなのに。こうなるなら控え室で食べればよかった。

がっくりと肩を落としていると、頭の上から小さな笑い声が聞こえた。


不思議に思って顔を上げると、恵衣くんが拳を口元に当ててくすくす笑っていた。



驚きのあまり目を見開いて固まる。恵衣くんの笑った顔を入学してから初めて見たからだ。

私の視線に気づいたのか直ぐにいつもの顔に戻った。



「戻る」



そうとだけ行ってくるりと背を向け階段を登り始めた恵衣くん。

その背中はあっという間に見えなくなった。