────僕が編入してきた初日に"お前は変異種なんだから、せめて俺の迷惑にはならないようにしてくれ"っていきなり言われてね。


少し前に広間で皆とご飯を食べていた時、来光くんが言った言葉だ。

もしかして、この時も今みたいに悪意なく言っていたのだとしたら……?


相変わらず不機嫌そうな顔で傷の様子を伺う恵衣くん。

この表情も、怒っているのではなくて普段からそういう顔だったとしたら……?



もしかしたら私は恵衣くんの事を、ずっと勘違いしていたのかもしれない。

思い返せば入学してすぐの頃、嘉正くんは恵衣くんのことを「根はいい奴だよ」と言っていた。


いい人じゃなきゃ、こんなにも丁寧に怪我の手当をしてくれはしないだろう。



「……治癒の祝詞、奏上するか? 軽い傷は自然治癒させた方がいいらしいけど」

「あ……じゃあ大丈夫。ごめんね」

「悪くないのに謝るな。俺が惨めになる」



その言い方に、もう、と肩を竦めた。

丁寧に冷やしてもらったおかげで、蚯蚓脹れは引いて赤い線がうっすらとだけ残っていた二三日もすればすっかり綺麗に消えているだろう。



「それ、良かったのか」


手水舎で手ぬぐいをバシャバシャと洗いながら、恵衣くんが尋ねた。

それ?と首を傾げていると、振り返った恵衣くんが私の手元を指さす。



「あっ」