それでやっと分かった。

────恵衣くんって、すごく不器用な人なんだ。


目を吊り上がらせてぶつぶつと文句を呟きながらも、手当をする手つきは優しくて丁寧でどこか怖々していて。

賢くて優秀で同級生に比べれば落ち着きがあって、なのに謝るのは下手くそで言葉足らずで。


何もかもが完璧な恵衣くんはずっと私たちとはどこか違う人なんだと思っていた。けれど、今日初めて、ちゃんと恵衣くんが同い年の男の子に見えた。




「……何笑ってんだよ。馬鹿にしてんのか」

「だからしてないってば」



ふふ、と反対の手の甲で口元を押えてそう言う。



「……変異種め」



苦い顔でそう呟いた恵衣くん。

今の恵衣くんの表情や言葉のニュアンスから、その言葉に悪意は無いのは分かった。

きっと変なやつ、という意味で呟いた言葉なんだろう。


それにしても、言葉選びが下手くそすぎるよ……。

そんな言い方じゃ他の誰かが聞いた時、勘違いして────。



「あっ……」



突然声を上げた私に、恵衣くんは訝しげな顔をした。