社頭へ出るとそのまま手水舎へ向かった恵衣くん。

着くなり自分のポケットの中から手ぬぐいを取り出して柄杓でばしゃりと濡らした。



「え、恵衣くん……?」



こちらには目もくれずもの黙々と手を進める。

最後に手ぬぐいを固く絞ると振り返って私の手首をもう一度掴んだ。


蚯蚓脹れになった手の甲を見て顔をしかめると、絞った手ぬぐいを押し当てた。

元々痛みはなかったけれど、冷たさが心地よかった。


「あり、がとう」


ぎこちなくお礼を言えば、彼はより一層顔を顰めてふっと目線をそらす。


「……傷、付けるつもりはなかった」


いつもの平坦な声は、いつもよりも元気がない。


「……俺の過失だ」


苦虫を噛み潰したような表情でそう付け足す。


その表情と声色から、やっと彼がどういう意味でここまで私を連れてきたのかが何となく分かった。



「えっと……謝ってるんだよね?」

「どう見ても謝ってんだろっ!」



途端に威勢を戻した恵衣くん。

不本意そうに顔を真っ赤にした恵衣くんに、思わず小さく吹き出した。