反射的に振り向けば、激しく首が横に振れた恵衣くんとパッと目が合った。
彼は一層険しい顔をして、首が触れた方とは反対の頬を抑える。
「なぜお前はそう何も出来ないんだ。出来損ないは出来損ないなりに努力をしろ、何度言えばわかる」
氷のナイフのようだ。
その声はただ平坦としていて少しの温もりも感じず氷のよう。言祝ぎもなければ呪も感じない。
ひたすら鋭く攻撃的で胸が痛くなる。
「だから神主にも選ばれず、同級生が奉納舞に選ばれる中お前は選ばれないんだ。情けない、何故兄さんが出来ていたことがお前は出来ないんだ」
「申し訳、ありません」
「謝罪など求めていない。目に見える成果を出せ。これ以上落胆させるな」
「……はい。父さん」
頭を下げた恵衣くんを見下ろしたお父さんは踵を返して歩き出す。私の横を通り過ぎる際に目が合ったが、何も言わずに通り過ぎた。
お父さんの背中が見えなくなって、私と恵衣くんの間には重い沈黙が流れた。
ち、と舌打ちをした彼は忌々しげに私の事を睨みつける。
その唇の端が切れて、血が滲んでいた。
「……あの、血が」
「お前には関係ない」