コンコン、と控え室の扉が軽くノックされて「はい!」と返事をしながら小走りで駆け寄る。
着替えるために閉めていた鍵を回して扉を引くと、まだ衣装姿のままの聖仁さんが立っていた。
「お疲れ様。あ、もしかして出るところだった?」
「お疲れ様です。はい、ちょうど着替え終わって」
「良かった、ナイスタイミング」
ナイスタイミング?
どういう事だろう?
これ、と顔の前まで手を持ち上げた聖仁さん。その手が持っていたものに思わず「あっ」と歓喜の声を上げた。
「富宇先生からの差し入れ。ご褒美のアイス」
「ありがとうございます……!」
差し出されたそれを受け取った。
「寮だと他の子たちがずるいって文句言うと思うから、戻る前に食べて行きな。池のそばは片付け終わってるし、涼しいからオススメだよ」
「ふふ、確かに。そうしますね。聖仁さんは?」
「俺まだちょっと用事があるから、気にせず先に戻って」
はい、とひとつ頷く。
「本当に今日はありがとう、ゆっくり休んで」そう言って目を細めた聖仁さんは私の肩をぽんと叩くと歩いて行った。