それは二人の舞が綺麗で、お母さんの舞が上手だったからだと思っていたけれど、それだけじゃなかったんだ。

心の底から楽しんでいる人の姿は、見ている人の心も楽しませる。

だから私は目を奪われたんだろう。


自分が先ず楽しむこと、単純なようで難しい。踊る前は不安だし、踊り始めれば頭はいっぱいになってしまうから。

でもそうか、私、少しはお母さんみたいに舞えたんだ。


いっぱいになった胸を白衣の上からそっと抑える。まだ胸の高鳴りの名残が残っていた。

次はもっと、上手く舞えるようになりたい。



「本当にお疲れ様。本当にありがとう。巫寿ちゃんがいてくれたから、無事に月兎の舞を奉納出来た」

「────私の方こそ、ありがとうございました。本当に、楽しかったです……!」


心の底から出た言葉。自分でもわかる、言祝ぎの力に満ちた言葉だった。