「私、全然練習通りじゃなかったし、何度もフォローしてもらって……」
「初めての大舞台で緊張もしていて、その中でしっかり舞い切ったんだ。終わり良ければ全て良し、だよ」
「でも……瑞祥さんみたいには、やっぱり踊れなかったです」
「あはは。後輩にするっと追い越されたら、瑞祥もまたショックで寝込んじゃうよ」
聖仁さんは「よっ」と姿勢を正すと、膝に肘を着いて身を乗り出した。
「またネガティブになってる。言祝ぎを高めないと。本当に後悔だけ?」
そう言われて、膝に視線を落とす。
月の光を浴びながら、川のせせらぎと争の音色に合わせて舞った瞬間を思い出す。思い出すだけで胸が高鳴った。
ふるふると首を振れば、聖仁さんは手を伸ばして私の頭をぽんと叩いた。
「……私、初めて舞が楽しいと思いました」
「いい顔で踊ってたもんね」
「それで、私みんなも同じ気持ちならいいのにって思ったんです」
まだまだ拙い荒削りな舞だったけれど、私たちの舞でみんなも楽しいと感じてくれたらいいのに。
あんなにもいっぱいいっぱいだった自分がそんなふうに思えたことに今更ながらびっくりする。