言祝ぎの子 弐 ー国立神役修詞高等学校ー


どさりと隣の席に座った聖仁さんは椅子に沈み込むと、背もたれに頭を乗せて深く息を吐いた。

目だけを動かして私を見ると、にっと口角を上げた。


「お疲れ様、頑張ったね。今までで一番上手だった」


その瞬間、ぶわっと目頭が熱くなって胸に込み上げるものがあった。


「わ、私いっぱいいっぱいで、今も何が何だか……」

「ふふ、そりゃそうだ」


言葉に詰まる私に、聖仁さんは体を起こすと右手を差し出した。

え?と困惑気味にその手と聖仁さんを見比べる。すると身を乗り出して右手をぎゅっと力強く握った。


「────ありがとう」


その言葉の重みに気が着いたと同時に、その手が震えているのにも気が付いた。


当たり前だ、だって聖仁さんもずっと不安だったんだから。

それなのに、そんな態度はおくびにも出さずにずっと私を励ましてくれた。当たり前のようにそれが出来る聖仁さんの強さを今になって気が付く。


きっとその強さのおかげで、私はやり遂げることが出来た。

それなのに思い返してみれば、自分の舞はまだまだお粗末だった。音を外した箇所もあったし振り付けを間違えて聖仁さんに助けてもらうこともあった。


あれだけ練習したのに。


悔しさに唇を噛み締める。