「楽しかったね。また来年も来たいな」
「そうだね。補習が無ければの話だけど」
嘉正くんの言葉にみんなひとつため息を零す。
夏休みはまだまだあるけれど私たちの夏休みはあと数日で終わる。再来週からは夏期補習だ。
「2週間も夏期補習なんて、そんなに勉強に力を入れているんだね。進学校?」
夏期補習があるのは、六月に起きたあの事件のせいで私達が二ヶ月も登校できなかったからだ。
けれどそんなことを恵理ちゃんに伝えられるはずもなく、「まあ、そんなとこかな」と苦笑いで言葉を濁した。
「じゃあ、そろそろ帰ろうか。恵理ちゃんもいるし、丑三つ時までには帰らないとね」
「嘉正くん、丑三つ時って! オバケとか信じてるの?」
くすくすと笑った恵理ちゃんは立ち上がっておしりの土埃を払うと「帰る前にトイレ行ってくるね」と社務所の方へ走っていった。
その背中が見えなくなって、嘉正くんはほっと息を吐いた。
「恵理ちゃんってなかなか鋭いね。ドキッとした」
「あはは……親友だけど私も時々ハッとさせられることよく言われたよ」
「勘が鋭いんだね、もしかしたら霊感も強い方かも」
そういうものなんだ、と目を丸くする。