こんなに大きな月が出てたんだ……。
見つめれば見つめるほどそこに浮かんでいるのが不思議に思えて、その妖しさに取り込まれそうになる。心が奪われる。
「……巫寿ちゃん!」
名前を呼ばれてハッと我に返った。
聖仁さんのソロパートが終わって二人で踊る箇所の曲が流れていた。
慌てて差し出された手を取った。
聖仁さんは目を細めて笑った。
「見れた?」
その問いかけにこくりと頷く。
こんなに綺麗な月が出ていたのに、今まで気が付かなかったなんて。
ちゃんと見上げてよかった。
「いい顔。その調子」
そう言った聖仁さんに釣られて、私も笑みを浮かべた。



