聖仁さんの後に続いて橋の下に来た。
まずはここで、懐紙を口にくわえて川に手をつける。
川岸にしゃがみ込んだ私たち。差し出された右手をそっと握ると、聖仁さんはひとつ頷き、ゆっくりと川に沈めた。
「……手を清める神事なら、水道で洗うのが一番だと思うんだよね」
ボソッとそう呟いた聖仁さんに思わず吹き出しそうになって慌てて真面目な顔を作った。
必死に唇を結びながら、笑かさないでくださいと目で訴える。
小さく笑った聖仁さんは川の中でぱっと手を離すと、ゆっくりと手を引き上げると懐紙で水滴を拭った。
慌てて自分も同じようにして手を拭う。
あれ、たしか川から引き上げるまで繋いだままなんじゃなかったっけ……?
聖仁さん間違えちゃったのかな。いや、でも何度も月兎の舞を踊った聖仁さんだ。間違えるはずがない。
私が説明を聞き間違えたんだろう。
それよりも、清めの儀が終われば反橋の上ですぐに舞が始まる。
集中しなくちゃ。
よし、と気合いを入れ直して立ち上がる。
ひとつ頷いた聖仁さんと共に、反橋の上にあがった。



