「────松の緑の變る事なく 常盤に堅盤に夜の守り日の 守りに守恵み幸へしめ給へと 恐み恐みも 乞祈奉らくと白す」
最後の一言が読み上げられた瞬間、ドン──ッと風の塊が天井から落ちてきたような風圧を感じた。
水滴が水たまりに落ちて波紋が広がるように、その風は瑞雲宮司を中心に丸く広がって、私の髪飾りのりぼんをふわりと煽って吹き抜ける。
その瞬間そこにいた全員が息を飲んだ声がした。
深々と一礼した瑞雲宮司が舞台から去る。
その瞬間、思わず深く息を吐いた。
「以上をもちまして、終了となります。奉納舞は社頭庭園の反橋にて十分後に執り行います」
その声とともに、神楽殿の中はざわめきで溢れた。
よし、と軽く膝を叩いた聖仁さんが立ち上がった。
「俺達も行こうか。出番はすぐ回ってくるからね」
「は、はい……!」
急いで立ち上がりその違和感に気が付いた。
違和感というよりも、それまであったものが無くなっていた。
目を丸くして足元に視線を落とした。



