「皆さまご存知の通り先月八月より原因不明の病で床に伏せる学生が多発しております。教員神職共に早期解決に尽力しておりますが、宮司の意向によりこれより少々お時間を頂戴致しまして、平癒祈祷の儀を執り行います」
少し客席がざわついた。
客席に座っているのは本庁の役員や神職もいるけれど、来賓と思われる格好をした人も多い。
原因不明の病、という言葉に動揺する声だった。
喧鵲禰宜頭が一礼して下がり、それに変わるようにして上から下まで真っ白な装束斎服を身にまとった瑞雲宮司が現れた。
「……っ!」
舞台へ上がる階段を一歩一歩踏み締めながら登る姿に息を飲んだ。
姿、というか雰囲気だ。瑞雲宮司の雰囲気が、いつもとは全く違う。
瑞雲宮司をよく知っている訳では無いけれど、いつも穏やかに笑っている姿を遠くから見ていた。
けれど今の瑞雲宮司には無意識に息を止めてしまうほどの圧倒的な存在感と気迫、まるで触れれば血が出てしまいそうな程の鋭さがあった。
その雰囲気は崇高で神々しいさすら感じてしまう。
私が感じた気迫や鋭さは、畏怖の念だったのかもしれない。



