以前聞いた話では、本庁で働く役人はスカウト・推薦制なのだと誰かから聞いた。

神修を卒業した学生の進路は、御祭神さまに神主に選ばれて社の宮司になるか、神職を募集している社へ就職するかの二択。神職は年中不足しているらしく、卒業後の進路に困ることは無いのだとか。

そしてそのどちらにも進まず尚且つ在学時の成績が優秀で本庁から打診があるか、実務を積んで三名以上の明階持ちの神職から推薦された神職が、日本神社本庁の役人として働くことになる。



そういえば、禄輪さんから私の両親も神社本庁の役人だったと聞いたことがある。

その時に禄輪さんが「自分だって優秀だったんだぞ」と言っていたのは、そういう理由だったんだ。


どちらにしろ、本庁で働いている人達は神職の中でもエリート軍団なわけだ。

それだけあって、祭壇を前に祓詞を奏上する役人さんの声は明朗で心地よい。


まるでお手本のような発声だな、と目を細める。



粛々と開式の儀は進んでいき通例通り「以上をもちまして……」の言葉で開式の儀は終了した。

本庁の役員が下がると同時に、舞台にまねきの社の江國(えくに)喧鵲(けんじゃく)禰宜頭が現れた。


舞台の隅で祭殿に一礼した後に少し身を捻ってこちらを向いた。