本殿を参拝し終えた私たちは、参道にずらりとならぶ出店をひとつひとつ覗いた。
みんなでお揃いの狐面を買うと、面の裏側に蚯蚓のような文字で何かが書かれていた。
夏休みに入ってからも勉強を続けていたのもあって、だいぶ崩し字にも馴染んできた。
面の裏に書かれていたのは「祓い給え 清め給え 神ながら守り給い 幸え給え」、略拝詞と呼ばれる短い祝詞だ。
この祝詞は「お祓い下さい お清め下さい お守り下さい 幸福にして下さい」という意味でお願いごとの全てが詰まっている。
聞けば神主さんが書いたものらしい。
「なるほど、お守り代わりになる訳だ」と嘉正くんが感心していた。
色々な店を回っていると稀に人に化けた妖もいた。きっと彼らもゆいもりの社の神主さまに招かれた妖なんだろう。
妖のいる屋台を冷やかしたり知り合った子供たちと鬼ごっこをしたり、買い食いをしてヨーヨー釣りをして輪投げをして、屋台を端から端まで遊び尽くす頃にはうんと夜も深まって、もうすぐ日付が変わろうとしていた。
みんなと直ぐに打ち解けた恵理ちゃんは、すっかり名前で呼び合う仲になっていた。
祭りの余韻に浸るように、鳥居へ続く石階段に腰掛けてぼんやりと取ったヨーヨーを見つめる。