「落ち着いてなんか居られるかよー! 観月祭の前に、平癒祈願の神事するんだって!」
平癒祈願?と聞き返したのは私だけで、目を見開いた聖仁さんがガタッと音を立てて立ち上がった。
「本当に!?」
「本当に! 瑞雲宮司が二日前から清祓の祈祷始めてたんだって! 三日目の今日に治病祈祷祝詞を奏上するって!」
まるで腰が抜けたかのようにストンとその場に座り込んだ。
「巫寿ちゃん分かる? 病気が治るように祈願する神事だよ」
なるほど、病気平癒の神事なんだ……!
ということは、あの原因不明の病気の正体がわかったということだ。
「本来なら平癒祈願の神事に三日三晩の清祓奏上なんてしないんだけど……それほど瑞雲宮司も力を入れたいと思っているってことだよね!」
来光くんは興奮を堪えるように握った拳を胸の前でぶんぶんと振った。
来光くんの解説によると、神事が執り行われる前に神職は祓詞を奏上して、心身の穢れを落として清らかな状態で祝詞を奏上するのが普通だ。
穢れを落とすという事はつまり、言霊の力の呪が一時的に抑えられ言祝ぎが高まるということ。
三日三晩も祓詞を奏上したということは、それだけ呪が抑えられ言祝ぎの効果が高まっているということらしい。



