鏡の前で私の緋袴のリボンを結び直す聖仁さんの手つきに口を開く。


「聖仁さん、結び直すの慣れてるんですね」

「ん? ああ。瑞祥とは家同士の仲が良かったから、神修に入る前から付き合いがあってね。小さかった頃よく瑞祥のを結び直してたんだ」

「そんなに前から……?」

「幼馴染ってやつだね」


前に誰かが「この界隈は狭いから皆顔見知りみたいなもの」って言っていたけれど、確かに皆仲が良かった。

けれど二人はそれ以上に分かりあっているような気がした。




昨日まで少し欠けていた月は、夜空の真ん中で爛々とした美しい満月になった。

観月祭が始まるまであと一時間、社頭では観月祭に招かれた人達が談笑しながら月を見上げていた。

私達も学校が終わったあと通し稽古を三回ほどして夕食をとり、控え室で身支度を始めていた。



「巫寿いる!?」



ガラッと勢いよく控え室の扉が開いて、慶賀くん達が顔を覗かせた。