緊張した面持ちの自分が鏡の中に移る。

階級には不相応な緋袴に、今回初めて身につけた千早(ちはや)。薄い白地には本来なら鶴や亀、松や菊などが緑色で描かれることが多いらしいけれど、今回は月光のような柔らかい黄金色で兎の模様が描かれていた。

緋袴も千早も、神楽舞を奉納する巫女にのみ許される装束だ。


胸の前にゆるりと垂れる胸紐にそっと触れた。

またこんなにも早くに緋袴に足を通すとは思ってもいなかった。


自分を落ち着けようと、ふぅ、と小さく息を吐く。

頭飾りに取り付けられた鈴がちりんと音を立てた。


こんこん、と控え室の扉が叩かれて急いで戸を開ける。

戸を開けると、私と同じ黄金色の兎の絵が描かれた狩衣姿の聖仁さんが立っていた。


「どう? 着付け上手くできた?」

「あ、えっと……多分?」

「ふふ。本当は神楽部の女の子たちに手伝って貰えたら良かったんだけど、もう門限過ぎてるからね。ちょっと俺が手直ししてもいい?」


お願いします、と頭を下げるとあげた拍子にぽんと撫でられた。