「どうしてここにいるんですか? 今日は表の社の祭、あなたみたいな人は入って来れないはずだけれど」
嘉正くんが片手で私を制すと一歩前に出てそう尋ねる。
あなたみたいな人?────あ、まさか。
「ここの神職さまに招かれているからだよ。知ってるだろう、神職に招かれれば鳥居を通ることが出来る」
やっぱりそうか、このお婆さんは妖だ。
「神職さまに招かれたんだ、それに悪さをするような歳でもない。だからそんな物騒な顔をするんじゃないよ」
お婆さんはニタリと笑う。
嘉正くんは肩を竦めると苦笑いで「すみません」と謝った。
お婆さんは親しげに笑いながら近付いてきた。
「あんたら神修の学生だね。今日は遊びに来たのかい?」
「そうだよー! ばあちゃんも遊びに来たの?」
「ばあちゃんはやめとくれ、ババでいいよ。わしゃ、ここの神主に頼まれて授与所を手伝いに来たのさ」
妖が社を手伝うんだ、と目を丸くすると、そんな私を見てババは楽しそうにケラケラ笑った。