理由があったにしろ、開門祭の神話舞ですら最後でやり遂げれなかった。

それなのに更に大きな舞台で瑞祥さんの代わりを踊るなんて。


「すぐには決められない頼み事をしているのは承知なんだけど、時間が無いんだ。今ここで答えを聞かせて欲しい」


あ、と情けない声が漏れる。

それもそうだ。もし私が断れば、すぐに別の生徒を探さなければいけない。

時間が無いんだ。


「私が……瑞祥さんの代わりが務まるとは思いません」

「はは……申し訳ないけど瑞祥の代わりは、誰にも出来ないよ」


その言葉に、二人が重ねてきた時間がどれだけのものだったのかが分かった。


「でも、俺ができる限りのサポートはするし練習も朝から晩まで付き合うつもりだよ。だから────頼む」


意思の強い声だった。


正直自分には荷が重過ぎる。

大切な式典、しかも本庁が主催している。神話舞の時は代役要員の神職さまがいたけれど、今回はそうはいかない。

間に合う? 上手くいく?

不安しかなかった。


でもきっとそれは私だけではなく、聖仁さんや瑞祥さんも色んな不安を胸に抱えている。

それでも二人は、私に代わりを頼むと決めてくれた。二人が私のことを信じて、頼ってくれたんだ。


「分かり、ました。やります」


聖仁さんは目を見開いた。

一瞬少し泣きそうな顔をしたかと思ったが、直ぐに「ありがとう」といつも通りに笑った。