それほどたくさんの練習を重ねてきた舞だった。
去年も舞手には選ばれていたらしく『また今年もか』と瑞祥さんはため息をついていたけれど、きっと心の底ではそんな風には思っていなかったはずだ。
じゃなければ、あんなに必死に練習をする必要はないはずだ。
こんな形であっさり諦められるようなものじゃないはずだ。
「巫寿ちゃんに、代わりに出て欲しい」
言われたことが理解できなくて、数十秒遅れてやっと「え……?」と聞き返した。
「巫寿ちゃんに頼みたい。瑞祥の代わりに、月兎の舞を踊ってくれないかな」
私が……瑞祥さんの代わりに?
言葉の意味を理解する前に口は勝手に動こうでした。
「私には出来ッ────」
聖仁さんは続きの言葉を止めるように片手を上げた。あまりにも思い詰めたその表情に言葉に詰まる。
いやそれでも、私には出来ない。
観月祭まであと十数日を切った今から舞を覚えることも、瑞祥さんの代わりとして舞台の上に立つことも。
それなら、もっと経験がある盛福ちゃんや玉珠ちゃんを代わりに出すべきだ。
ふたりが無理なら、別に神楽部の部員じゃなくてもほかの二年の先輩や三年の先輩だっている。