くすくす笑いながら自分も歩き出したその時、「巫寿ちゃん!」と後ろから声をかけられて振り向く。

聖仁さんが走ってくるのが見えた。


「あれー? 聖仁さんじゃん!」


急に立ち止まった私を気にして振り向いたみんなが、駆け寄ってくる聖仁さんに気が付き手を振る。

聖仁さんはいつも通りの柔らかい笑みを浮かべて手を振り返した。


「ごめん、ちょっと巫寿ちゃん借りていい? そんなに時間かからないから」

「はーい! じゃあ巫寿、先に池行ってるな」

「亀釣っちゃ駄目だよ」



聖仁さんにそう釘を刺されて、二人は顔をひきつらせて不自然な笑みを浮かべるとそそくさと走っていった。

間違いなく釣る気だ。


走っていった皆に呆れたように肩を竦めた聖仁さんは、「さて」と私を見下ろす。



「大事な話があるんだ」



真剣な目に少し戸惑う。

ガヤガヤと騒がしい辺りを見回した聖仁さんは、「移動しようか」と窓の外に視線を向けた。