「配役をリストにしたプリントを配るわね〜」
富宇先生の周りにわっと群がるみんなの勢いに気圧されていると「巫寿ちゃんはいいの?」と聖仁さんに笑いながら尋ねられた。
「私は初参加だし……端役で大丈夫です」
他のみんなよりも下手くそだし、という言葉は口に出すといつも叱られるので、今日はすんでの所で飲み込んだ。
「聖仁さんはいいんですか? 瑞祥さんも」
奥で立ち上がらずに座ったままの瑞祥さんをちらりと見て尋ねた。
「僕らは舞台監督しないといけないからね。高等部の神楽発表の演目も結構難しいし、そっちに集中したいから」
よっこらしょ、と立ち上がった聖仁さんは配役で揉め始めたみんなを宥めるために輪の中へ入っていく。
部長って大変なんだなと息を吐いた。
はい巫寿ちゃん、と中等部の男の子から差し出されたプリントをお礼を言いながら受け取って上から下まで目を通す。
いくつか私にでも出来そうな役があって、安堵の息を吐いたその時、
どさ、とまるで大きな荷物が床に落ちるような音がしてみんながハッと振り返った。
私もつられて振り向いて、その先の光景に目を見開く。
「瑞祥っ!」
瑞祥さんが床に倒れていた。
誰よりも早く駆けつけた聖仁さんがその肩を抱き起こす。
「瑞祥! 瑞祥聞こえる?」
「……ん、聞こえる。慌てすぎだよバーカ……ちょっとクラっとしただけだから……」