やっと今になってその凄さを実感する。
それと同時に自分にはなぜその遺伝子が引き継がれなかったのだろうと肩を落とした。
「────中等部からは三年生の盛福さん、秀明くん」
やった、と小さくガッツポーズした盛福ちゃんに、おめでとうと声は出さずに口だけ動かして伝える。
「ありがとう巫寿ちゃん!!」と感極まったように大きな声でそう言うとガバッと抱きつかれた。
勢いのまま後ろにひっくり返ると、一連の流れを見ていた聖仁さんが盛福ちゃんの頭に手刀を落とした。
「怒られちゃった。へへ」
今度は小声でそう首をすくめる。
「今年も盛福ちゃんに負けちゃった……。私も練習たくさん頑張ったのにな」
悔しそうに唇をすぼめた玉珠ちゃん。途端に「あ……」と気まずそうな顔をする。
ごめ、と言いかけた彼女を片手を上げて制したのは聖仁さんだった。
玉珠ちゃんの隣に膝を着いてその頭をぽんぽんと励ますように撫でた。
「玉珠が人一倍頑張ってたのは知ってるよ。僕も瑞祥も富宇先生もみんな気付いてた。でもね、盛福も今日選ばれるために人一倍頑張ってたんだ。玉珠が影で必死に練習してたようにね。そう思うと、どうかな?」