え、と顔をひきつらせる。

本来はあんなに長い罰則じゃなかったんだ……。


「まあ、観月祭は毎年門限破りが多発するから、罰則もいつもより長いらしいよ」

「私たちは舞手だから許されてるけどな!」


罰則を食らってでも誰かと月をみたいというのはロマンチックだけれど、まだ私には早いみたいだ。


「瑞祥さんと聖仁さんは、誰かを誘ったんですか?」


舞手として参加する二人なら、その時間に社頭を歩いていても咎められはしないだろう。

興味本位でそう尋ねれば、二人は顔を見合せた後にくすくす笑う。

そしてお互いにお互いを指さした。


えっ、と思わず両頬に手を当てて声をあげれば、二人はイタズラに笑った。



「ごめんごめん、冗談」

「いや、冗談でもないだろ!」



二人のそんなやり取りにいっそう首を傾げる。



「観月祭の伝説は知ってるよな?」

「はい。池に繋いだ手を沈めるって」

「あれの元になったのが月兎の舞なんだよ。踊る前の清めの儀で池に手をつけるんだ」


へえ!と目を丸くする。

卒業生の誰かが作った伝説か何かだと思っていたけれど、ちゃんと謂れがあったんだ。



「月兎の舞を奉納した初代の学生が卒業してから結婚したらしいよ。それも相まって、今の伝説が出来たんだって」