道案内も兼ねて私と恵理ちゃんが先頭を歩く。


「ちょっと巫寿! 何なのあのナチュラルイケメンは!」


後ろを歩く嘉正くんたちをちらちらと気にしながら恵理ちゃんは小声でそう言った。


「初対面でサラッと下の名前を呼ぶとか、どこの国の王子様なのーっ!」


いやそれは、と口を挟んだが恵理ちゃんには聞こえていないらしい。

何はともあれ、お互いに嫌な印象は抱かなかったようで一安心だ。


顔を真っ赤にさせて後ろの雑談に参加する恵理ちゃんの姿に、そういえば昔からミーハーなところがあったなと思い出す。


そんな感じでみんなでわいわい歩いていると、遠くに大きな鳥居が見えた。

山の麓にあるそれは「ゆいもりの社」の表の鳥居だ。


鎮守の森の木々には赤い提灯が飾られている。

社号の「ゆいもり」の文字と社紋が黒で描かれた提灯は暗闇の中をふわふわ漂っているようだ。


人で賑わう楽しげな声と和楽器で奏でられる祭囃子が風に乗って聞こえてくる。

社頭へ続く石階段をたくさんの人が昇り降りしているのが見えた。