こうやって、私たちの見えないところで努力をしているからこそきっと神話舞や奉納舞に選ばれるんだろう。
「部活が始まるまで、横で見てても良いですか?」
「もちろんだよ。何なら、おかしな所があったら指摘して欲しいくらい」
「お、名案! よろしくな巫寿!」
いやいやいや、と慌ててぶんぶん首を振る。
明らかに私の方が指摘される側だし、二人の舞に指摘する箇所なんてない。
押し問答の末スマホで二人を撮影するというので手を打ってもらい、預かった瑞祥さんのスマホを構えて練習室の隅っこに座った。
ふたりが位置に着いたのを確認して録画ボタンをタップ、反対の手でCDプレイヤーの再生ボタンを叩く。
争の軽やかな音色が流れ出し、カメラのレンズを二人に向けた。
観月祭で二人が舞うのは、月兎の舞と呼ばれるその名の通り兎を連想させる軽やかな足取りで舞う神楽だ。
普段私たちが練習している浦安の舞のようにしっとりしゃなりとした枚ではなく、とにかく軽やかで素早い足さばきが特徴的な舞だ。
舞に合わせて曲も明るいアップテンポ。
兎がじゃれあっているような振り付けが可愛らしくて、観月祭のリハーサルで初めて見て直ぐに好きになった。