来光くんとは途中で別れて練習室へ向かう。

廊下を歩いていると、確かに観月祭の噂話があちらこちらでひそひそ聞こえる。

誰が誰を誘ったとか誰から返事待ちだとか、そう言うので賑わってあるのは浮世離れしたこの学校では唯一学校ぽい。


「こんにちは」


カラカラと引き戸を開けると、練習室に着いたのは自分が三番目だったらしい。


「こんにちは、巫寿ちゃん。早いね」

「お疲れ、巫寿!」


既に体操服に着替えて練習を始めていた聖仁さんと瑞祥さんが振り返る。


「聖仁さんも瑞祥さんも、早いですね」


脱いだローファーを靴箱に入れながら話しかければ二人は肩を竦めた。


「部活が始まったら、自分たちの練習は思うように出来ないからな〜。その穴埋めだよ!」

「練習室が使える時間も限られてるし、ちょっとでも早く来て練習したいからね」


確かに部活が始まれば、部長と副部長の二人は後輩の指導で忙しそうだ。これまでも部活中に二人が自分たちの練習をしている所はあんまり見かけなかった。

揃って似たような事を言った二人に、その練習熱心さを見習わないとなぁなんて心の中で思う。