「ま、どっちにしろ誘ったところで行けないんだけどね」
「え? どうして行けないの?」
「観月祭は門限の後に行われるから、生徒は参加出来ないんだよ」
「あー……」
なるほど、と苦笑いをうかべる。
私たちは以前休みの日の門限後にこっそり寮を抜け出して社頭へ遊びに出かけたことがあった。
神修では土日の晩に妖たちに社頭が解放されて、出店が開かれる。
そこで私たちは寮を抜け出したことを嬉々先生に見つかり、3ヶ月の文殿清掃の罰則を言い渡されたのだ。
きっと観月祭の日も毎年こっそり寮を抜け出す生徒がたくさんいて、先生たちはその生徒を追い回し、次の日から学校の至る所が綺麗になるんだろう。
ガラガラと前の扉が開いて泰紀くんが帰ってきた。
「よっ色男ー! モテる男は辛いねぇ!」
「ばっ、止めろバーロー!」
顔を赤くした泰紀くんは慶賀くんの口を塞ごうとかけ出す。
教室の真ん中で取っ組み合いが始まって、「巻き込まれる前に出ちゃお」と誘われ来光くんと教室を出た。