「"観月祭の日に配られるススキを手首に括り付けて手を握りあい、池に浮かぶ月影にその手を浸すとその二人は永遠に結ばれる"だろ? 懐かし〜! 中等部の頃に流行ってたなそれ」
「そ! そういうこと。だからさっきの彼女は泰紀を観月祭に誘いに来たんだろうね」
へぇ〜、と大きく頷いた。
好きな人と月に手を浸すって、何だかロマンチックな伝説だなぁ。
「泰紀と嘉正は毎年色んな女子から誘われてるよね」
「俺だって一昨年は誘われたしー!」
対抗心を燃やした慶賀くんが唇をとがらせる。
ふふ、と笑った。
「嘉正は優しいしイケメンだし良家の長男だし、モテる理由も分かるんだけどさぁ。なんであの筋肉バカもそれなりに人気なんだ?」
泰紀くんが人気な理由は何となくわかるけどなぁ、と心の中で呟いたはずが口に出ていたらしい。
二人が私を凝視していた。
「え、まさか巫寿……」
「嘘だろ巫寿……あんなやつのどこが……」
「ち、違うよ! そうじゃなくて!」
夏休みに私が神修を辞めようと考えていた時、一番に私の異変に気が付いたのは泰紀くんだった。