「でもよー…病気じゃなかったらかなり不味くねぇか?」


教室に戻る道すがらで、泰紀くんがぽつりとそう言う。


「おいおい泰紀〜。高熱が出て声が出ないなんて、病気以外ならそんなの誰かから呪われたか何かしかねーぞ!」


あはは、と笑った慶賀くんはやがて自分の言葉を理解して「え……?」と真顔になった。

呪われた、その言葉にみんなが目を見開く。



「呪いを……かけられたのか?」

「いやでも……だってここ神修だぞ? 最強の結界が施されてるんだぞ?」

「でもよ、考えてみろよ。神職がいちばん大切な声が揃いも揃って出なくなるなんて、かなりまずい状況だろ。そんなこと、普通起きるか?」



それは、と慶賀くんは言葉を詰まらせた。

急に心の隅で僅かに感じていた胸騒ぎが大きくなる気配がした。


呪い、でもそんなまさか。


「ちょっとちょっと! みんなストップ!」


パンパンッ、と来光くんが顔の前で手を叩いた。

話し合いに熱中していた二人が顔を上げる。