「豊楽センセーはどう思うー?」


一番太い木の木陰のしたで日傘に麦わら帽子、アームカバーを付けて休んでいた豊楽先生が顔を上げる。

滝のような汗をかいていて、今にも溶けてしまいそうだ。先生の場合、比喩ではなくて本当に溶けかけているんだけれど。


「え? 何だって?」


豊楽先生はうちわで仰ぎながら聞き返した。


「だからー、学校内で流行ってる風邪のこと!」

「ああ、その事か。校医の陶護先生は風邪だって言ってだろう」

「でもただの風邪の症状じゃないですよね?」

「確かになぁ。俺が処方した薬も効いてないみたいだし」



ふー、と息を吐いた豊楽先生は立ち上がると私に向かって手招きをする。

首を傾げながら歩み寄ると、先生は自分の足元の草を指さした。


あ、と図鑑のページをめくればそれは薬草で、ようやく最後の一種類を集めることが出来た。



ちょうどその時授業の終わりを知らせる鐘が響き渡る。昼休みの時間だ。



「近々陶護先生から問診を頼まれていたから、風邪以外の病気の線もあたってみるよ。ただの風邪にしろそうじゃないにしろ、気を付けることに越したことはないから、お前たちもしっかり予防するんだぞ」


はーい、と声を揃えて返事をして、集めた薬草を提出する。

その時、乾いた咳が聞こえて振り向くと、恵衣くんが苦しそうに眉をひそめて咳き込んでいた。


「……恵衣くん、大丈夫?」

「……ほっとけ」


思っていた通りの返事が帰ってきて、彼はそそくさと歩いていく。

それを見ていた来光くんが「あんなやつほっとけばいいのに」と私の代わりに顔を顰めた。