「ねぇー! なんか変だと思わない?」


漢方薬学の授業、種類の違う薬草を五種類集めてくるという課題が出た私たちは鎮守の森にいた。

図鑑を片手に首を捻っていた私は、遠くから来光くんがそう叫んだ声で顔を上げる。


「何がだよ〜」


クラスの中で一番最初に課題を終わらせた慶賀くんは木の枝の付け根に寝転びながら聞き返す。

来光くんは額の汗を拭ってふぅと息を吐いた。



「学校の雰囲気だよ。風邪が流行り始めてからもう二週間近く立ってるのに、治るどころかどんどん病人が増えてるんだよ?」

「去年インフルが流行った時もそんな感じだったじゃん」

「そうだけどさー」



それでも腑に落ちないのか、雑草をぷちぷちとちぎりながら険しい顔をした。

確かに、ただ風邪なら一週間もすれば良くなるのが普通だ。学校内で流行っているのもインフルエンザなんかの流行性の病気ではないと医務室の陶護先生が言っていた。

ただの風邪にしては長引いているし症状も感染力も強い気がする。