「本庁の役員って、社主催の神事の準備は全く手伝わないで参列するだけなんだよな。なのに本庁主催の祭には強制的に手伝わされるから、皆いがみ合ってんだよ〜」
アホらし、と瑞祥さんは袂から取りだしたマーブルチョコを口リ放り込んでぼりぼり咀嚼する。
一学期に「本庁派」と「神修派」について、嘉正くんから教えてもらったことがある。確か二つに分裂した決定的なきっかけは空亡戦での考え方の違いだったはずだ。
きっと両者の間にある溝はそんなにあっさり埋まるほど浅くは無いのだろう。
ふと、黒いスーツの大人たちの中に自分と同じ松葉色の制服が見えた。
「あ……」
大人たちと対等に話す大人びたその横顔は、クラスメイトの恵衣くんだった。
なんで恵衣くんが? と思い直ぐに彼の両親が本庁の役員だったことを思い出す。
放課後、本庁の庁舎へ入っていく恵衣くんの姿を何度か見たことがある。
部活にも入らず、放課後は毎日両親の働く本庁へ赴いてその仕事を手伝っているようだった。