聖仁さんの口添えですんなり中へついて行くことが出来た私は、神話舞で知り合った神職さま達から声をかけられ月が登るまでの間舞台の設営を手伝う事になった。
これ運んで、あれ持ってきてとバタバタあちこちを走り回っていて気がついた事があった。
それは、いつもよりも黒いスーツの人達が多いという事だ。
このまねきの社の敷地内で黒いスーツを着ている大人たちと言えば、日本神社本庁の役員だ。
設営や指示を飛ばす大人はやはり本庁の人の方が多い。
「聖仁さん、今日はどうして本庁の人が多いんですか?」
リハーサルが始まる少し前に、「少し休みなよ」と休憩に誘ってくれた聖仁さんにそう尋ねる。
「観月祭は本庁が主催だからだよ。神事や御祭神さまに関わる祭はまねきの社が主催だけど、成人祭とか今回の観月祭は本庁が主催することになってるんだ」
「だからその時期になると雰囲気最悪で、バッチバチ」
呆れたようにで笑った瑞祥さんは「見てみろよ」と指をさす。
その方向に顔を向ければ、何やら険悪な雰囲気で言い争う神職さまと本庁の人がいた。