「俺もマスクした方がいいよなぁ」
「大丈夫だよ、馬鹿は風邪ひかないから」
「言ったな? 待てや来光ッ!」
バタバタと廊下を走っていく三人にくすくすと笑いながら歩く。
「あっ、巫寿ちゃんいたー!」
名前を呼ばれてぱっと振り返ると神楽部で仲良くなった盛福ちゃんと玉珠ちゃんが手を振りながらこちらへ走ってくる。
「巫寿ちゃん、これから移動教室!?」
「そうだよ。詞表現実習の振替授業なの」
「詞表現実習!? ってことは祝詞の実践練習なの!? 見に行ってもいい!?」
「見たい……!」
身を乗り出した二人に苦笑いを浮かべる。
「ダメだよ。ふたりとも次の授業あるよね?」
「ちぇー、やっぱりダメかぁ」
「ふふ、それにしてもどうしたの? もうすぐ授業始まっちゃうよ」
盛福ちゃんは「あっそうそう!」と手を叩いて何かを思い出す。
「聖仁さんから伝言! 今日の部活は部長と副部長が不参加のため自由参加の自主練にするってー!」
「あ、自主練なんだ。でも何で二人ともお休み? 二年生って今日何かあったかな」
「違うよ巫寿ちゃん! 部長たちは観月祭の打ち合わせ!」