「えーと、学校内で風邪が流行ってるので手洗いうがいはしっかりしてください、だって〜」
朝のホームルーム、薫先生は紙を見ながら面倒くさそうにそう言った。
八月も中旬に差し掛かり、神修のなかでは季節外れの風邪が大流行していた。
私たちのクラスも嘉正くんが1週間前から休んでいて、恵衣くんがマスクをつけて登校している。
「あと、今日から"お見舞い"は禁止ね」
「えー、何で?」
「医務室が生徒でごったがえしになってるからだって。入院してるのも重症な子達だし、君たちが伝染らないようにって措置だよ」
確かに、私達も毎日嘉正くんへ授業プリントやノートを届けるために医務室を尋ねていたけれど、日に日に入院する生徒が増えていっているようだった。
「じゃ、連絡事項は以上ね。今日もしっかり学びなよ子供たち!」
「はーい」
薫先生が出ていって、皆は伸びをしながら立ち上がる。
一時間目は移動教室だ。
「くそー、今日から嘉正に宿題教えて貰えなくなった」
「病人に頼るのがそもそも間違いなんだよ」
「お前だって聞いてたくせに。にしても、何か嫌な感じだよなぁ」
そう言った慶賀くんに、私も「そうだね」とひとつ頷く。
数週間前までは賑やかだった廊下は、休む生徒が多いせいかシンとしている。
歩いている生徒もマスクをつけたり具合が悪そうに咳き込んだり、なんだか学校の雰囲気は暗かった。