その日の放課後、私は雅楽練習室を訪ねた。
「失礼します」と声をかけて中を覗くと、練習していた人たちは一斉にこちらを見る。
「巫寿ちゃん、いらっしゃい」
直ぐに私に気がついた聖仁さんが手を振りながら駆け寄ってくる。
「皆、集まって!」
手を打った聖仁さんの周りに皆がわらわらと集まる。
興味津々といった露骨な視線が刺さりちょっと居心地が悪い。
人だかりの中に瑞祥さんを見つけ目が合う。小さく手を振ってくれた。
「今日から入部する、高等部1年生の椎名巫寿さんです」
おお、と歓声が上がってパチパチと拍手が起こる。
「高等部からの編入生で、まだ慣れないことも多いと思うからフォローしてあげてください」
はーい、と返事したみんなの声は私を歓迎しているような温かいものでほっとする。
じゃあ解散、と言った瞬間私の周りにわっとみんなが駆け寄ってくる。
あちこちから質問や自己紹介が飛んできて目を回していると、すかさず聖仁さんが間に入ってくれた。