「妖の神職は妖力を使って力をどういうふうに使いたいのかをイメージすることで言霊の力と同じような力を得ることが出来るわけだ」
「それって、めちゃくちゃ難しくねぇか? 言霊はただ言葉を発せば良いだけだけどさ、妖力はイメージ力がいるんだろ?」
「その通り。妖力を扱うことは言霊の力を扱うことより27倍難しいと言われている」
27倍……まるで想像もつかない。
力の調整にあんなに苦労したんだ。それでも眞奉の力に頼っている部分の方が大きい。
豊楽先生はきっとそれ以上に苦労したんだろう。
「だから、自然と妖の神職は少なくなるし、力が強い種族である天狗や妖狐の神職に偏りが出る。だから種族間での差別が────と、ここからは妖生態学で勉強してくれ。そろそろ授業を始めようか」
チョークを置いた豊楽先生は黒板を消しながら手を払うと今日の分のプリントを配り始める。
「センセ〜、今日は何つくんのー?」
「今日は虫刺されの軟膏だ。ちょっと強めの生薬も使うから、余っても持って帰るなよ慶賀」
「そ、そんな事する訳ないだろぉ〜?」
「声が裏返ってるぞ」
そんなやり取りにくすくす笑いながら、漢方薬学の授業は始まった。