「俺は雪童子(ゆきわらじ)だ。だから夏の間は体が溶けやすくなってて、今年の夏は髪が溶けたって訳だ」

「豊楽先生って妖だったんだ!」


雪童子、一学期の妖生態学の授業で習った記憶がある。

寒い雪の日に積雪の中から生まれる妖で、何十年と生きたあと水に溶けてまた積雪から生まれるのだと。

体が雪でできていること以外姿も人と変わらず非常に友好的な妖で、その多くが現世(ひとのせかい)で生きているのだとか。


頭の中では理解していたつもりだけれど、こうして身近に妖がいることには驚かされる。

良く考えればここの社は妖も人も参拝に来るところだ。神職が人だけとは限らない。

あれ、でも……。


「妖にも"言霊の力"ってあるんですか?」

「お、いい質問だ。じゃあ授業に入る前に復習がてら妖生態学の話をしようか」



豊楽先生はチョークを手に取った。