「────にしてもビックリだよな!」


その日の夕食の席で、慶賀くんは口いっぱいにお米を頬張りながらそう言った。

食べるか喋るかどっちかにしてよ、と迷惑そうに来光くんが顔をしかめる。


「確かにかなり意外だった。まさかあの場で恵衣が歌うなんてね。それに……」

「あの歌声な〜。俺気がついたら聴き入ってたわ」


来光くんのお皿から唐揚げをひょいと奪った泰紀くんもうんうんと頷きながらそう言う。


「私も。すごく素敵な歌声だったね」

「歌声は、でしょ? あの性格はどうにかなんないのかな」


それでも気に入らないのか来光くんは唇を尖らせながらそう言った。

前々から思っていたけれど、来光くんだけ恵衣くんへのあたりが強い気がする。

他のみんなも確かに恵衣くんの物言いや態度に怒ったりすることはあるけれど、普段はクラスメイトの一人として普通に接している。


「ねぇ、嘉正くん。来光くんと恵衣くん、昔何かあったの?」


そう尋ねる私に、嘉正くんは苦笑いをうかべた。



「色々あったよ。どれが今のあの二人の確執に繋がるのか分からないほどにね」