「恵衣さん、歌ってみませんか〜?」
「……これはレクリエーションですよね。今俺がここで歌うのは授業の単位取得において必要では無い行為だと認識しています」
若干険しい顔をした恵衣くんは淡々とそう述べる。
「え、なになに? もしかして恵衣恥ずかしいの?」
「……は?」
慶賀くんのそう言った声色から別に茶化そうとして言ったのでは無いことは分かった。
しかし鬼のような顔をした恵衣くんが振り向いた。
「だってこの筋肉ダルマが堂々と歌ってるのに、恵衣が歌えないことないよなぁ」
恵衣くんの目がどんどん吊り上がる。
悪意は無い、悪意は無いけどどう考えても今それを言えば悪意があるように聞こえるんだよ慶賀くん。
ぴくぴくと唇の端を引き攣らせた恵衣くんは両手でバン!と机を叩きつけると立ち上がった。
「おお〜、恵衣さんも歌いますか? いいですねぇ、それじゃあ調整を意識してチャレンジしてください〜」
無表情で淡々とデンモクを操作する恵衣くんが今から歌うだなんてちょっと信じられない。