「初めましての学生さんもいますね〜。浮所奏楽と申します、どうぞよろしくお願いします」
「あっ、椎名巫寿です。よろしくお願いします」
「うんうん、元気いっぱいですね〜。いいですねぇ」
なんだろう、この先生の声を聞いていると夜更かしした次の日に聞く祓詞と同じくらい眠くなる。
無意識にぼーっとしてしまい、隣の来光くんに名前を呼ばれてはっと我に返る。
「奏楽先生は"声の魔術師"なんだぜ」
「大袈裟ですよ〜、慶賀さん」
声の魔術師?
「その声色は変幻自在! 呪から言祝ぎまで何でも来い! ヨッ浮所奏楽〜!」
「ふふふ、立派な口上をありがとう」
よく分からないけれどとりあえずすごい人なのだということは何となくわかった。
「さあお喋りはこの辺にして、授業を始めますよ〜」
はーい、とみんなは声をそろえる。
奏楽先生は黒板に達筆な文字で「声学」と書いた。
「一年生の二学期に学ぶ"声学"の授業は、文字通り声について学ぶ科目です〜。皆さん、楽しくお歌を歌って、呪と言祝ぎの声の出し方の違いを勉強しましょうね」