目を剥いてそう聞き返す私たちに「だからそうだってば」と面倒くさそうに答えた薫先生に私たちはドタバタと詰め寄った。
『あれ、薫先生が出したの!?』
『そうだよ。言ったじゃん、いい考えがあるって』
『ちょっと待てぇぇぇ!』
何なの煩いな、と薫先生は耳に小指を入れながら起き上がる。
『牛鬼を使役した!?』
『だからさっきからそう言ってるでしょ。たまたま空亡の残穢を食った牛鬼の修祓を頼まれて、いけるかなと思って試したらなんかいけた』
『なんかいけたって……』
単体ですら神職が五人がかりで挑む妖なのに、空亡の残穢まで取り込んでいるのを、そんなノリで使役したっていうの?
なんだかもう色々信じられない。
『俺、巫寿にウィンクして合図したのに。太郎ちゃんにも追いかけ回すだけって命令してたしさぁ』
誰がウィンクひとつで牛鬼が飛び出してきて追いかけ回されることを想像できただろう。
"荒療治"と聞いて若干嫌な予感はしていたが、その予感は間違いではなかったらしい。