「薫から俺のこと聞いたの?」
「はい。双子の兄だって」
「あれ、まだ兄貴だって思ってくれてるんだ」
そう言った芽さんに「うん?」と首を捻るも、直ぐに薫先生の言葉を思い出す。
「そういえば盛大な喧嘩中だって……」
私がそう言えば、芽さんは僅かに目を見開いたかと思うと「あははっ」と声を上げて笑い出す。
「盛大な喧嘩中ね……確かにその通りだよ。薫がずっと怒っててさ。兄弟の縁を切られるかと思ってたんだけど、一応まだ兄として認識されているようで良かったよ」
目尻の涙を拭いながら芽さんは息を吐いた。
笑い上戸な所はすごく似ているかもしれない。
「どんな喧嘩をしたんですか?」
「薫に聞いてごらんよ。きっと面白い話が聞けるから」
自分からは話すつもりは無いらしく、芽さんはそれ以上は何も言わなかった。
沈黙が気まずくて「えっとー……」と話題を探す。芽さんはニコニコしたまま私の言葉を待っている。
なんというかちょっとやりにくい人だな、と心の中でこっそり思う。
「芽さんは、お買い物ですか?」
「うん、そうだよ。ここは面白いものが色々飛び交ってるからね」
「面白いもの?」
「そう、面白いもの。珍しいもの高価なもの、何でも揃う場所だから」
確かに外では買えないような不思議なものが沢山ある。
イモリの黒焼きが売られているのに絶句したのはついさっきの話だ。