そう言ったお兄ちゃんに慌てて棚にそれを戻した。
「ち、違うよ。ただ見てただけ! 梅の刺繍が綺麗だなって」
「確かに綺麗だね。それも買う?」
「い、いらないってば! 学校で借りれるし、先生も買うのは2年生からでいいって言ってたから!」
「遠慮しなくても……あ、もしかして兄ちゃんのこと甲斐性なしだと思ってるのか!? 妹一人の学用品揃えるくらいは稼いでるぞ!?」
「違っ……そうじゃなくて、ていうか学用品の値段の範疇超えてるから!」
これ以上店の中のものを物色していたら、ちらりと見ただけで「買ってやろうか?」と言われそうなので「私外で待ってるから」とほとんど言い逃げするように外に出た。
表の通りに出ると、迎門の面を付け直す。
迷子になるのは怖いので、店の周りをうろうろする。
出店を覗いたり呼び止められた露天商と少し話をしたり、まだ変わった姿の妖には驚きはするものの初めてここに来た時よりかは気持ちに余裕がある。