私たちが訪ねたのは鬼脈にある神具を取り扱うお店だ。
祭壇用の神器や大麻や巫女鈴、形代を作るための和紙など、神事や神職に関する沢山の道具が置いてあった。
一切値札を見ないでこれもあれもと定員さんに頼む姿に顔をひきつらせながら、巫女鈴の棚を見上げる。
五色のリボンがついていたり柄に縮緬の布が巻かれたり、様々な種類のものがある。
値札を見てまたギョッとして、間違っても床に落としたりしないように1歩距離を取った。
ゆっくり棚を見ているとひとつに目が止まる。
部分に梅の花の刺繍が施され、柄の下から几帳結びした朱色の紐が垂れている。
かむくらの社で見た梅の花によく似ていて、無意識にそれに手を伸ばした。小さな鈴の奥からシャランと雅な音色が聞こえる。
心做しか梅の花の香りがしたような気がして目を細めた。
「何か良いのあった?」
ひょこっと私の背後から手元をのぞきこんだお兄ちゃんにびっくりして、思わず巫女鈴を落としそうになる。すんでのところで悲鳴をあげながらキャッチした。
「び、びっくりした!」
「そんなに驚かなくても。お、いいじゃんその巫女鈴」