服を着替えて慌てて寮を飛び出し、社頭へ続く階段を駆け降りる。

そして拝殿の前で手を合わせているその背中を見つけて慌てて声をかけた。


「お兄ちゃん……!」

「巫寿、おはよ」

「おはよ、じゃないよ! 急にどうしたの?」


いつもと変わらない服装、いつもと変わらない笑顔で私を出迎えたお兄ちゃんは詰め寄る私を気にすることなく力いっぱい抱きしめる。

私の頭に顔を埋めた。


「あ〜〜俺の可愛い巫寿の匂い……」

「ちょっ……やめてよお兄ちゃんっ!」


顔をひきつらせながらその背中をバシバシと叩き腕から逃れる。

巫寿が冷たい、と泣き真似を始めたお兄ちゃんに溜息をついた。


「本当にどうしたの? 何かあったの?」

「違う違う。冬の昇階位試験に申し込むために本庁に顔出してたんだ。あと仕事の斡旋も」


そう言ったお兄ちゃんに目を見開く。


「とりあえず、車出ちゃうから中で話そうか」

「分かった……」


少し懐かしそうに社頭を見回したお兄ちゃんはゆっくり歩き出した。